工事精度の極意は「段取り八分」です。工事をする現場状況や搬入経路をしっかりと事前に把握し、その現場に最良な作業方法を考えて工事に臨みます。今回の鉄骨階段を取り付けるアパートとも一期一会の出会い!一生懸命工事します!
◆ もくじ ◆
製作する階段も、施工する現場も一期一会
その工事のために製作された鉄骨階段も世界にひとつ。そして現場は各地もあれど収まる場所は世界にひとつ。まさに工事は一期一会なのです。
今回の現場は、軽自動車が入ったらそのままバックしないと出られない、小さな路地の奥に建っていました。ということは・・そうです!いつも大活躍する重機(クレーン)無しで工事をすることなります!
この現場で最良の工事方法を考えよう。職人たちで事前に構想を練ります。工事の当日に現場を前に考えてるのでは遅いのです。
鉄骨材の搬入と墨出し
現地まで普通のトラックで入れないため、近くの道路までトラックで来て、そこから鉄骨材をひとつひとつ降ろして、軽トラックに積み替えて「前進とバック」でピストンして搬入していきます。地味な作業ながら密かに汗をかきます。
全ての鉄骨材を敷地内に運び入れたら、次は「墨出し」といって、この鉄骨工事の指針となる基準線を出す作業。とても重要な工程です。この基準線をベースにして鉄骨廊下と鉄骨階段工事の全てを取り付けていきます。
サッシの養生
建物にすでに施工されているサッシや玄関ドアなどは、工事で発生する粉塵や火の粉が飛ばないようにカバーします。これを「養生」といいいます。
さて、そろそろ墨出し終わったかな・・。
鉄骨廊下の「受け鉄骨」を施工
先ほど墨出しをした基準線に沿って、まずは鉄骨廊下の「受け鉄骨」を取り付けます。アパートの木造下地に対してコーチボルトでしっかりと固定します。
この「受け鉄骨」が起点となって梁材などの構造鉄骨をボルト組みして組み立てていきます。
工事の極意は「段取り八分」
工事精度は「段取り八分」(下準備)で決まります。いろいろな状況を考えて対策を決めておいたり、作業の流れを事前にシュミレーションして独自の工具を用意したり。
この、手間とも思える事前の行動が本番の工事をスムーズに進行させます。現地で「あ!これが必要だった!」とトラブルになると工事は止まってしまいます。
多種の職種の職人さんたちがパズルのように出入りする綿密なスケジュールが組まれる建築現場では、工事ストップが大きな痛手になります。段取りが本当に大事なんです。
鉄骨廊下の鉄柱を「決める」
工事において、仮固定ではなく、しっかり本番用に固定することを「決める」ということがあります。
地面を掘り、砂利を詰めてモルタルで階段の支柱を固定していきます。しっかり垂直に立っているか、左右に振れていないかなど、専用の道具を使って計測します。
鉄骨廊下を組み立てていく
だいぶ鉄骨廊下の姿が見えてきましたね。廊下の鉄骨フレームができたところで、床面に打設するモルタルのためのデッキプレートを敷き詰めて溶接で固定していきます。
鉄骨階段を組み立てていく。ん?イナズマ模様?
いよいよ鉄骨階段の工事です。写真に見えているのは鉄骨階段のササラ桁(ステップを左右から挟んでいる部分)を見てみてください。何やら防錆塗装(赤茶色の部分)がされていないジグザグのイナズマ模様が見えますね。
これは「ステップを溶接するところ」です。この部分に防錆塗装をしてしまうと溶接ができなくなってしまうからです。事前に溶接するところをマスキングして防錆塗装し、現場に持ち込んでいます。
現場で階段のステップを溶接していく
重機(クレーン)を使える現場であれば、工場で鉄骨階段を完成体にした状態で持ち込み、吊り上げて施工するのですが、今回は重機が入らないので「現場で鉄骨階段を作る」作業が必要でした。
ササラ桁とステップをバラバラに現地に持ち込み、それらを一段一段溶接して鉄骨階段を作っていきます。
なぜ手摺の高さを1.8Mにしたのか
鉄骨階段の溶接組立が終わったところでお次は階段手摺工事。フラットバーと角パイプで作っているのですが、この手摺の高さは、相場よりも倍以上高い1.8M。なぜでしょうか。
これはアパートが密集した住宅地の中にあって、住民同士のプライバシーを守るためです。このために手摺を高く作っており、手摺の上半分はアクリルパネルが貼られて目線を隠せるように作ってあります。
手摺の下半分はシャープなフラットバー手摺。上半分はアクリルパネルを貼れるように額縁加工しています。
仕上げ塗装をして鉄骨廊下と階段が完成
完成したアパートの鉄骨階段です。この鉄骨階段は、この現場にのみ適用された階段であり、また、この階段が収まる唯一の現場であるといえます。
まさに工事は一期一会。組合せはひとつしかありません。